現在位置: トップページ > ビッグ・アイ アート > バリアフリーアートアカデミー:障がい者アート障がい者アート講演会「障がい者が作り出す新しいアートの流れ」

障がい者アート

障がい者アート講演会「障がい者が作り出す新しいアートの流れ」

はた よしこ(ボーダレス・アートミュージアム NO-MA アートディレクター、絵本作家)

平成22年2月14日(日) 14:00~16:00

大研修室

日本各地で出会った障がい者による斬新なアート

講演会の様子
会場の様子
展示会の様子

国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)が、本年度から本格的に取り組んでいる障がい者アート事業の一環である講演会。その第2弾は「障がい者アートの世界」と称して、障がい者アートのメッカ「アールブリュット美術館」との交流も深い、はたよしこさんをお招きして開催されました。

講演会の冒頭、はたさんは「数年前もビッグ・アイさんで講演会を開催したんですが、その時のお客さんは数十名ほどでした。今日は百人以上もお集りくださり、障がい者アートへの関心の高さを伺い知ることができ、大変、うれしく思っています。」と喜びを伝えてくださいました。講演会は、障がい者によるアートの歴史をヨーロッパと日本の場合に分けて紹介することから始まりました。
精神医学が発達した20世紀初頭のヨーロッパにおいて、幾人かの精神科医が病院の中で斬新な絵画に出会います。それらは精神疾患を有する方々によるもので、数人の精神科医たちはそれぞれ独自に作品創造の過程を論文にまとめたとのこと。その後「シュールレアリズム」という革新的な芸術運動が起こったヨーロッパで、画家ジャン・デビュッフェが芸術創造の訓練を受けていない作家、または芸術界における徒弟制度の枠組にとらわれない作家の作品に出会いました。創造性の源泉から湧き出る自由な作風に圧倒されたデビュッフェは、独自にそれらの作品の収集を始め、「生(なま)の芸術=アール・ブリュット」と名づけたそうです。彼が集めた作品の多くが精神疾患を有する方々の手によるもので「アウトサイダー・アート」とも呼ばれました。これらの作品はシュールレアリストたちによって賞賛され、その芸術性の高さを認められるに至ったそうです。
一方、日本では戦前に山下清という知的障がい者による作品が大衆の人気を得るまでになったそうですが、その後長い間、美術界で障がい者による作品が注目を集めることはなかったとのこと。1990年代、ヨーロッパのアウトサイダー・アートが紹介され始め、「エイブル・アート・ムーブメント」を皮切りに、美術関係者や福祉関係者の双方による障がい者の作品の調査や発掘、研究が進み始めたとのことでした。

はたさんは1991年、西宮市(兵庫県)に「すずかけ絵画クラブ」を設立し、障がいのある方を対象にした創作活動をはじめられました。作業所で生まれる作品の数々に驚いたはたさんは、「もっとたくさんの作品に出会ってみたい」との思いから、全国各地に出向き、そこでさまざまな障がい者によるアート作品にふれられたそうです。
講演会の後半、はたさんは実際に出会った作品の数々をスライドで紹介し、その制作プロセスや芸術性の高さをくわしくお話しくださいました。それらの作品のいくつかはアール・ブリュット美術館(スイス)に所蔵されているほどの高い芸術性を備えたもので、「どの作品も作家の日常生活と密接に関わり、独自の経験や記憶から浮上してきたイメージを描いたものです。どうしてこのような絵を描くのか、という疑問を抱かせることこそが、これらの作品の魅力そのものと感じています。」と力強く締めくくられました。

はた よしこ
はた よしこ

【プロフィール】
1991年より兵庫県西宮市にある知的障害者支援施設「武庫川すずかけ作業所」にて絵画クラブを主宰。1998年よりドキュメンタリー映画「まひるのほし」「花子」(故・佐藤真監督)の企画制作にも携わった。近年は、日本全国の作品調査を行い、アール・ブリュット・コレクションとの連携展や2010年のパリ市立美術館主催の「アール・ブリュット・ジャポネ」展(3月24日~)も手がけている。


このページの先頭へ戻る

Copyright © 2008 ビッグ・アイ 国際障害者交流センター. all rights reserved.