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演劇・ミュージカル

曽根崎心中

~フラメンコで描き出される近松の哀しい愛の世界~

開場時間を目前に控えたビッグ・アイ周辺には、この日の演目を心待ちにしていた観客が長蛇の列を作っていました。それもそのはず、日本を代表する人形浄瑠璃・歌舞伎作家、近松門左衛門の300年に渡って上演され続けているという人気作「曽根崎心中」を原作とした「FLAMENCO曽根崎心中」は、フラメンコファンをはじめ、舞踊・音楽ファン、そして国内外から絶賛されている作品。文化庁芸術祭優秀賞を受賞したほか、フラメンコの本場・スペイン公演でも、高い評価を得ています。

この日本とスペインの文化を融合させる画期的な試みは、作品のプロデューサーである作詞家の阿木燿子さん。音楽監修の宇崎竜童さん。そして、日本で最も活躍しているフラメンコ舞踊家・振付家の鍵田真由美さんと佐藤浩希さんとの出会いによって、実現したと言います。

~和服をアレンジした衣裳や和楽器。そして、心に語りかけるパフォーマンス~

暗転した会場に響く和太鼓の音。和服をアレンジした衣裳で登場し、巡礼のシーンを演じるダンサー。BGMには、宇崎竜童さんが歌う「西国三十三ヶ所お札所めぐり」の曲が流れます。真っ黒な舞台セットの奥に浮かび上がるのは、主人公、お初と徳兵衛。会場は息を飲んだように静まり返りました。

ステージで繰り広げられる物語は、たとえストーリーを知らない人でも充分に理解できるようナレーションが入れられています。

そして、劇中曲の歌詞はすべて日本語。さらに、演劇的要素をプラスした踊りなので、徳兵衛が悔しがるシーン、怒るシーンなど、床を打つ足の音の強弱で感情の変化が読み取れ、観客はぐいぐいと物語に引き込まれていきました。

~観客の心を引きつける、哀しくも美しいラストシーン~

醤油屋に勤める徳兵衛と天満屋に身を置く遊女・お初は将来を固く誓い合った恋仲。ところが、徳兵衛の主人は商売熱心な徳兵衛と義理の姪と結婚をさせようと、徳兵衛の継母に大金を渡して話をつけようとします。それを知った徳兵衛は、継母から大金を取り戻し、主人に返そうとするのですが、人のいい徳兵衛は親友の九平次に金を貸してしまいます。九平次は、約束の日を過ぎてもお金を返しに来ません。一方お初の身にも、身請け話が持ち上がっていました。

運命に追い詰められた二人は、久しぶりに生玉本願寺の境内で再会。その時、町衆といっしょに九平次が現われますが、金を返さないどころか、徳兵衛が店の金を使い込んだと町中に吹聴し、商売人にとって最も大切な信用を汚されます。遊女であるお初も、自由に結婚するなど無理な話。生きて結ばれることがないのなら、天国で夫婦になろうと固く誓い合い、愛と名誉を守るために心中を果たしたのです。この時、お初は、それまでの艶やかな遊女の衣裳から一変し、心の純粋さを映し出したかのような純白の衣装、そして情熱的な真っ赤な腰紐が印象的でした。寄り添うように息絶えた二人の上に、やさしく舞い降りる白い花びら。あまりにも哀しく美しいラストシーンに、涙をこらえる観客も多かったようです。

~感動的な舞台を見終えて、鳴り止まない盛大な拍手~

カーテンコールで出演者たちが登場した時は、割れんばかりの盛大な拍手。観客の感動の大きさを感じずにはいられません。そして、最後に登場した阿木耀子さんと宇崎竜童さんの姿に、観客は大喜び。さらに暗転のあと、スポットライトに浮かび上がったのは、ギターを手にした男性。それが、宇崎竜童さんだと気づいた観客席からは、一段と大きな拍手が沸き起こりました。劇中歌を1曲披露してくださったあと、再び出演者とともに登場。客席に向かって「どうもありがとう」と叫ぶ宇崎竜童さん。それに応えて観客の拍手はいつまでも続いていました。フラメンコファンはもちろん、新たなエンターテイメント性を感じさせる今回の公演は、見る人の心にいつまでに残り続けるに違いない感動的なステージでした。

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