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演劇・ミュージカル

音楽座ミュージカル 『マドモアゼル・モーツァルト』

開演前のバックステージツアー 舞台のウラ側に興味津々

Rカンパニーによる音楽座ミュージカル「マドモアゼル・モーツァルト」の公演が、ビッグ・アイの多目的ホールにやってきました。さらに本番前のリハーサル風景を見学できたり、舞台セットや舞台袖の様子にふれられるバックステージツアーも開催。抽選による50名のみなさんは、はじめて見ることができる舞台のウラ側に興味津々でした。

まず会場ロビーに集まった参加者のみなさんは、出演者の藤田将範さんと対面。出演者が使用している専用ワイヤレスマイクについての説明を聞きました。親指の爪くらいの大きさのマイク部を髪の中に隠すことで、お客さんにはその存在を気づきにくくさせているそうです。

場内に入るとすでに「場当たり」と呼ばれる技術リハーサルが始まっていました。この公演では大きなセットを出演者自身が転換していくそうで、本番中の事故を未然に防ぐためにも、緊張した空気の中でリハーサルが進められていました。引き続き「SD」と呼ばれる音楽を流しての歌とダンスのリハーサルが始まりました。歌っている出演者の背後で、音響スタッフがモニターの具合を念入りにチェックしている様子が印象的でした。

巨大なセットや美しい衣裳 工夫を凝らした舞台ウラの数々

いよいよ舞台に上がります。今回の作品では4つの大きなセットが使われていますが、「グローブジャングル」と呼ばれる鉄のオブジェで、1つの大きさは高さが約5.4m、重さが500kgもあるそうです。この4つのオブジェは、ひとつに合体すると球体になるもので、本番ではシーンごとに出演者が舞台上を移動させ、さまざまなカタチを作り出していました。

また床面には、このオブジェを移動させる目印として、たくさんのテープが貼られていました。これは「バミリ」と呼ばれるもので、舞台上の照明が暗くなっても見えるように、蓄光テープが用いられているそうです。

その後、舞台の袖に移動し、衣裳の早替えのための小屋を見せてもらいました。今回の衣裳デザインでは、登場人物のキャラクターに合わせて、それぞれのテーマカラーが決められているそうです。モーツァルトは青、妻・コンスタンツェはピンク、姉・ナンネルは黄といったように、人間には色が、精霊には白が用いられているそうです。
バックステージツアーに参加されたみなさんは、より作品に近づけたようで、本番がますます待切れなくなった様子でした。

音と光が舞台セットと衣裳に命を吹き込む瞬間

いよいよ本番。幕が上がるとベッドに横たえられたモーツァルト。傍らで妻・コンスタンツェがその死を悼んでいます。厳かな楽曲がゆるやかに盛り上がり、変調すると、照明がステージ全体を明るく照らす。と、そこにはあのグローブジャングル。バックステージツアーで見た印象とは違い、色鮮やかな照明に照らされたそのフォルムは一層、重厚に際立っていました。

白い衣裳の精霊たちがメロディーに合わせ、グローブジャングルで音符のように踊っています。登場人物の衣裳のカラーも、色鮮やかに舞台映えしていました。バックステージツアーに参加されたみなさんは、音と光が入ることで、舞台がこんなにまで華やかになるんだと実感された様子でした。

舞台は18世紀末のヨーロッパ。ザルツブルグの平凡な宮廷楽士・レオポルトの家庭に生まれた、末娘・エリーザ。彼女の人並みはずれた音楽の才能に気づいた父は、彼女を作曲家にするため、男として育てる決心をする。なぜなら当時、作曲家は男だけとされていたから。

男として成長していくモーツァルトは、軽やかで心浮き立つメロディーを次々と発表し、たくさんの人々を魅了していきます。しかしその才能に嫉妬する人物が現れます。宮廷作曲家・サリエリです。彼はモーツァルトの音楽を低俗だとしながらも、しだいにその音楽の魅力、そしてモーツァルト自身に魅かれていきます。「もしかしたらモーツァルトは女なのかも」と直感したサリエリは、恋人の歌姫・カテリーナを使い、色仕掛けで真実を暴こうとします。

ちょうどそのころ、モーツァルトの下宿先の女主人が、自分の娘・コンスタンツェをモーツァルトと結婚させようと画策。なんとモーツァルトはコンスタンツェとの結婚を受け入れ、奇想天外な結婚生活が始まりました。


精霊たちが創る音楽の世界とオペラの宇宙感を堪能

物語がモーツァルトの全盛期に差し掛かると、「フィガロの結婚」「ドン・ジョバンニ」「コシ・ファン・トゥッテ」と、有名なオペラが紹介され、その度に精霊たちがグローブジャングルを移動させながら、ステージ上を軽やかに踊り回っていました。音楽はモーツァルトのメロディーをアレンジしたり、コラージュしたものに加え、音楽座ミュージカルならではのオリジナル・メロディーが劇場全体をオペラの宇宙に変えてしまったような感覚でした。

時代は経て、人気にかげりが出始めたモーツァルトに、興業師で俳優のシカネーターが、「おれと一緒に組んで、誰も見たことのないオペラを作ってみないか」と誘います。貴族相手の作曲に辟易していたモーツァルトは、不眠不休で作曲を始めました。モーツァルトのオペラの最高傑作「魔笛」の誕生です。これまでオペラとは無縁だった大衆は、モーツァルトを大歓迎しました。そして再度、モーツァルト人気に火がつき始めましたが、過度の作曲生活のため、モーツァルトのからだはすでに蝕まれていたのでした。

ここでようやく舞台が冒頭のシーンにつながりました。モーツァルトの死を悼む妻・コンステンツェ。男であるとか女であるとかではなく、自分自身を一人の人間として生き抜いたモーツァルトへの賛歌を歌い上げると、舞台はいよいよフィナーレへ。登場人物が、グローブジャングルが、色鮮やかな衣裳が、音と光をたずさえて、劇場全体を音楽の宇宙に変えていき、壮大なイメージと客席の喝采が鳴り響く中、終演を迎えました。

拍手は鳴りやまず、二度、三度とカーテンコールが続き、客席の誰もが素晴らしい舞台の余韻を楽しんでいる様子が印象的でした。


音楽座ミュージカル

【プロフィール】
音楽座ミュージカルは1988年に第1回作品「シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ」で旗揚げ。その後、「とってもゴースト」「チェンジ」「マドモアゼル・モーツァルト」「アイ・ラブ・坊っちゃん」「リトルプリンス(星の王子さま)」「泣かないで」「ホーム」「メトロに乗って」「21C:マドモアゼルモーツァルト」「七つの人形の恋物語」と次々に新作を発表し。現在までの観客動員数は160万人にのぼる。
全作品に共通する独自の精神性とオリジナリティは高く評価されており、 これまでに文化庁芸術祭賞、紀伊國屋演劇賞、読売演劇大賞など、多数を受賞。
2004年、音楽座ミュージカルの創造表現母体として「Rカンパニー」を結成。厳しいレッスンとオーディションを経た俳優たちにより、レパートリー作品や新作の創造と上演を行っている。

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