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演劇・ミュージカル

バリアフリーアートアカデミー劇団往来 公演『…もう一人の君に!』~夏子~

一般参加者も舞台に立った、白血病をめぐる人々の思いを描く物語

バリアフリーアートアカデミーと称して、劇団往来の代表作『「…もう一人の君に!」~夏子~』が上演(手話通訳・リアルタイム字幕・副音声ガイド付き)されました。

この公演は、現在、厚生労働省保険局医療指導管理官である向本時夫さんが、ご自身の体験や実話をもとに、約4年の歳月を費やして執筆した原作を舞台化したもの。2006年6月に大阪で初演を迎え、同年12月には、厚生労働省社会保障審議会特別推薦児童福祉文化財に認定。その後、東京・和歌山・広島・京都・滋賀など、各地で上演されています。

また、一般の方々を対象にした「演劇ワークショップ」が同時開催。2009年11月にオーディションが行われ、19名(うち、障がい者14名)の応募者が参加されました。ワークショップは約2ヶ月に及び、参加者は劇団往来の指導のもと、発声や演技の基礎訓練などに取り組みました。最終オーディションでは無事、全員が合格、今公演が初舞台となりました。

バックステージツアーで、役者魂に触れた参加者

本番直前のリハーサル終了後、今公演の舞台裏を案内する「バックステージツアー」が開催されました。劇団往来のあいはらたかしさんらを案内役に、舞台に上がり、客席を臨んだり、楽屋などを見学。「役者が10名出ていたら、その裏で30名のスタッフが働いています。また出番はたった5分でもヘトヘトになりながら稽古しています。このあとの舞台で何かを感じ取ってもらえるとうれしい」との真剣な言葉に、参加者のみなさんは役者魂を感じたようでした。

いよいよ開幕。MCとして登場したのは劇団往来の乃木貴寛さん。軽快なトークに会場から笑いがおこるなか、女性ボーカルグループ「スーパーバンド」が登場し、骨髄移植推進財団公認ソングでもある主題歌「笑顔のゆくえ」の演奏が始まりました。

娘の発病に戸惑う母親と、いい加減な気持ちで骨髄バンクに登録した男子大学生

物語は大阪と東京を舞台に展開します。

大阪で、在宅ヘルパーの仕事をしながら暮らす河本夏子が1人目の主人公。娘の彩夏は21歳で、ダンスの勉強をしながら、夢に向かって、バイト生活を送っていました。

しかし、そんな彩夏が急性骨髄性白血病と診断され、突如、闘病生活を送ることになったのです。娘を励ましながらも、さまざまな壁と立ち向かうことになる夏子の日々がはじまります。

もう1人の主人公は、東京の大学に通う牧原真司。
大阪の病院に入院している先輩へのお見舞いを理由に、交際5ヶ月の白井登喜子との旅行が実現しました。その病院で真司は、無邪気であどけない小学5年生のユミと出会います。

一方、彩夏の治療法が「骨髄移植」しかないということが判明します。にもかかわらず、なかなか骨髄移植を受ける勇気が持てない彼女。そんなとき彩夏は、同じ病棟で白血病と戦っているユミと出会いました。そう、真司が夏休みに出会った少女は白血病だったのです。
「お姉ちゃん、骨髄移植は神様からのプレゼントなんやで。移植ができたら、私だけでなく、みんなが幸せになれるんやで」というユミの言葉に、ようやく彩夏も移植を決意。しかし、そう簡単にドナーが見つかるわけもありません。

東京では、骨髄バンクに登録した登喜子と真司の仲が少しずつ悪くなっていました。骨髄バンクに「僕だったら、100万円もらえたら登録する」という真司に、「お金なんて不謹慎」「ドナー登録は善意で成り立っている」と登喜子は激怒。
そして、真司のもとに届いた一通の手紙。それは骨髄バンクのドナー適合通知でした。なんと、彼の骨髄に合う患者が見つかったのです。「まさか適合者が見つかるとは!」とショックを受ける真司。実は彼、コンパの罰ゲームで、骨髄バンクにドナー登録していたのでした。そんな理由でドナー登録した真司に、提供の勇気なんてありません。
ドナー辞退を決めた真司に、登喜子は「どうして人を助けられるのに辞退するの! もし患者が真司さんの家族だったら? 私だったら? どうして赤の他人には骨髄を提供できないの?」と、またまた激怒。ふたりの仲はそれをキッカケに冷めていきました。

その頃、大阪には疲れ果てた夏子の姿がありました。やっと適合者が見つかったと思ったら、ドナーが辞退したのです。「なんでそんないいかげんな気持ちでドナー登録するのか許せない」と目に見えないドナーに怒りをぶつけてしまうほど。

ドナーを待ち続けるしかない患者と、ドナーになることを躊躇する登録者、それぞれの葛藤を描きつつ、物語はクライマックスへと進みます。

もう一人の自分が行動を起こせば、なにかを変えることができる

ひさしぶりに大阪の先輩のお見舞いに訪れた真司は、愕然とした事実を知ることになります。ドナーが現れず、ユミが亡くなってしまったのです。
はじめて「自分に救える命があること」を知った真司は、もうかつての真司ではありません。「どうして他人のために、あなたが危険な目に遭わないといけないの?」と反対する母親を説得し、骨髄移植を決意します。

そして、彩夏は救われました。
季節はまた夏を迎えようとしていました。
エンディングでは、ユミを中心にすべての出演者がそろって、ひまわりをバックに、主題歌「笑顔のゆくえ」を大合唱。

白血病や骨髄移植を題材した舞台でしたが、テーマである誰もが持っている人への優しい気持ち、そして自分の中の「もう一人の君に!」に気づいてもらえるよう、笑いあり涙ありのハッピーエンドストーリーに仕上がっていました。

ふと気がつけば「ドナー登録のために採取する血液は2ccだけ」とか「骨髄移植のための入院期間は3~4日程度」とか「骨髄移植が白血病だけでなく、再生不良性貧血という疾患にも使われる」といった、これまで知らなかった豆知識も自然に身につく2時間でした。

劇団往来

【プロフィール】
劇団往来は、1984年12月に「演劇はカーニバルだ!! 芸術は場数だ!!」をモットーに設立。以降、イベント制作から各種イベントの施工、タレントのマネージメントなどエンターテインメントのあらゆる分野で活動している。また、事業内容は舞台・テレビ・イベントなどの大道具製作をはじめ、制作(自主公演・学校の芸術鑑賞会など)、講師(養成所やワークショップなど)など多岐にわたっている。
http://www.gekidan-ourai.jp/

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