国際障害者交流センター(ビッグ・アイ)

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愼英弘の部屋VOL.6 「在日外国人の無年金問題で兵庫県が救済制度を完成」

「在日外国人の無年金問題で兵庫県が救済制度を完成」

 日本には人口の2%以上の外国人が居住している。その外国人に対する社会保障は、1982(昭和57)年を境にして大きく変わった。

 1982(昭和57)年までは、在日外国人に対する国による社会保障はほとんどなかったといっても過言ではない。生活保護は適用対象ではあったが、不服申し立ては認められておらず、権利としての保障ではなかった。生活保護以外では、児童3法における児童手当等は支給されなかった。そのほか、一定の条件が揃っていれば国民健康保険には加入することができたが、国民年金制度には在日アメリカ人を除いて加入することができなかった。
 同年以後には、難民条約の発効により、内外人平等の原則に基づいて、在日外国人にも日本国民と同様の社会保障、たとえば児童手当等が与えられるようになった。しかし、年金に関しては、いまだに無年金のまま放置されている在日外国人がいる。
 今回は、在日外国人、および、現在は日本国籍であるがかつて外国国籍であった者の無年金問題について述べることにする。

1.年金とは何か

 年金は大別すると二つに分けることができる。一つは被用者年金であり、他の一つは国民年金である。
 被用者年金とは、読んで字の通り、雇われている人が加入する年金である。たとえば、サラリーマンだと厚生年金、公務員や教員だと共済年金である。
 国民年金とは、20歳以上であって、雇われていない人が加入する年金である。たとえば、自営業者や専業主婦(夫)、学生、仕事に就いていない者等が加入対象である。
 被用者年金には国籍要件がなかった。つまり、日本国民に限定していなかったので、在日外国人すなわち外国国籍であっても、会社員になれば厚生年金に加入できたし、公務員や教員になれば共済年金に加入することができたし、その状況は現在も変わっていない。
 一方、国民年金は加入対象者を、1981(昭和56)年12月31日までは日本国民すなわち日本国籍者に限定していたので、日本で生まれてずっと日本で育ったとしても、外国国籍の者は国民年金に加入することができなかった。加入したいと希望しても認められなかった。
 日本が難民条約に加入し、同条約が発効したことによって、1982(昭和57)年1月1日からは、在日外国人も国民年金制度に加入することができるようになったが、かつて加入を認められなかった人たちが、無年金となっているのである。このことが、現在の在日外国人の無年金問題として存続しているのである。

2.無年金になった原因は

 前述した無年金者も含めて、無年金障害者になる原因は、大きく分けると6通りに集約することができる。

① 1986(昭和61)年4月1日以前に、海外滞在中に病気やけが等によって医者にかかり(初診日が外国滞在中にあること)、その後にその病気やけが等が原因で障害者になった場合。→この状況の障害者はいまだに障害年金が支給されていない。

② 厚生年金の6カ月条項等があったとき、会社に勤めて6カ月以内に病気やけが等で医者にかかりその後にその病気やけが等が原因で障害者になった場合。→この状態の無年金者に対しては1994(平成6)年に救済が実現している。また、この条項は現在の厚生年金等の制度にはない。

③ 障害があるために障害年金を受給していた者が、その障害が軽くなったために受給権を失権した場合。→一度失権した受給権は復活しなかったが、1994(平成6)年に救済制度が実現している。

④ 学生や専業主婦(夫)が国民年金の任意加入であったとき加入せず、そのときに病気やけが等が原因で障害者になった場合。→この状態の無年金者については2004(平成16)年の特別立法の制定によって、一定の救済が実現している。詳しくは後述する。

⑤ 国民年金制度に加入していたが、保険料の滞納が一定期間以上あったときに、病気やけが等が原因で障害者になった場合。→この状態の無年金者はいまだに救済されていない。

⑥ 1982(昭和57)年1月1日の時点で20歳を越えている在日外国人の障害者の場合。→この状態の無年金者はいまだに救済されていない。

 以上の6通りが無年金障害者になった主要な原因であるが、②と③は救済されており、④は一定の救済がなされているが、①と⑤と⑥はいまだに無年金のままである。

3.無年金問題を解決するための取組み

 無年金問題を解決するために、在日外国人と支援者の日本国民は、二つの取組みを続けてきており、現在も続けている。
 一つは、無年金問題を抜本的に改善するために、国(厚生労働省)に対して年金制度の改革を求める働きかけをすること。
 他の一つは、国による抜本的な改善がなされるまでの間、暫定的措置として、地方自治体に対して無年金者の救済制度を樹立してもらうための働きかけをすること。
 前者の取組みは、在日外国人の無年金障害当事者によって、1983(昭和58)年からなされている。ほぼ毎年のように話し合いがもたれているが、国は改善しょうとする動きをいっこうに示さないまま今日に及んでいる。
 後者の取組みは、在日外国人の無年金障害当事者を中心にして、地元の自治体に対して働きかけをしてきた。その結果、市町村の統廃合が実施される以前の、すなわちおよそ3300の自治体があったときのおよそ4分の1の自治体で救済制度が実現している。特に兵庫県の神戸市における取組みは全国に大きな影響を及ぼした。

(1)国に対する働きかけ

 在日外国人の無年金問題を解決するために、各地方で無年金問題に取り組んでいる団体が集まって「年金制度の国籍条項を完全撤廃させる全国連絡会」(以下、全国連絡会という)を結成して、全国連絡会が中心になって国(かつての厚生省、現在の厚生労働省)に働きかけを続けている。
 老齢福祉年金とかつての障害福祉年金は全額税金でまかなわれていたが、在日外国人から税金は徴収するが、その税金でまかなっている福祉年金は支給されないのである。現在の障害基礎年金は60%が税金でまかなわれているが、在日外国人の無年金障害者にはそれも支給されていないのである。(これらのことに関して詳しくは、拙著『定住外国人障害者がみた日本社会』明石書店、1993年、Ⅱを参照されたい。なお、本書は品切れで書店では購入できないので、図書館から借りて読んでいただきたい。)
 無年金障害者は在日外国人だけではない。20歳を越えていた学生が国民年金に加入していなかったときに、病気やけが等が原因で障害者になった日本国民の無年金者もいる。その人たちはいわゆる「学生無年金障害者」と呼ばれており、無年金問題の解決を求めて裁判に訴えた。いわゆる「学生無年金訴訟」がそれである。
 その訴訟において、2004(平成16)年3月に、東京地方裁判所は無年金のまま放置してきたのは「立法不作為」であるとの判決を言い渡した。そして、同年10月には、新潟地方裁判所が、同じく「立法不作為」との判決を言い渡した。その結果、政府はあわてて救済制度の立案に取り組んだ。
 国会での議論の結果、2004(平成16)年12月に、特別立法である「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」が制定され、それは翌年4月1日から施行された。
 同法における対象者を誰にするのか、給付の金額をいくらにするのかが大きな課題であった。
 すなわち、「特定障害者」を任意加入時代に障害者になった学生と専業主婦(夫)に限定したのである。換言すれば、前述の(1)と(5)と(6)の無年金障害者は対象からはずされたのである。
 在日外国人の無年金障害者については、同法附則第2条において、必要があると認めるときには福祉的措置も含めて検討する、と検討事項にはあげられているが、いまだに何等の検討もなされていない。これは単なる推測ではなく、全国連絡会と厚生労働省の話し合いのなかでも、検討されたかどうかについて、厚生労働省の側は曖昧な回答を続けているのである。
 もう一つの課題である支給額であるが、国は障害基礎年金と同額にはしなかった。障害基礎年金の税負担分である60%にとどめたのである。すなわち、当時の障害基礎年金1級と2級の税負担分60%は、2級を4万円とし、1級はその1.25倍であるから5万円としたのである。すなわち、学生無年金障害者等に対する救済制度は実現したものの、決して障害基礎年金と同額にはしなかったのである。したがって、救済制度はできたものの、学生無年金障害者等にとっても、改善しなければならない課題を残したままなのである。

(2)自治体における救済制度

 無年金問題において、国による抜本的な改善がなされるまでの間、暫定的な措置として、自治体による救済制度を求める働きかけのうち、神戸市における取組みは大きなうねりをつくったといえる。
 神戸市に住んでいた日本生まれの中国国籍の障害者は、無年金問題の解決を求めるために周辺の心ある人たちに呼びかけた。そして、神戸市に対する働きかけを粘り強く行った。
 この無年金障害者に対して神戸市の担当職員は、「帰化して日本国籍を取得したら障害福祉年金を受給できる」と説明したので、それを信じて日本国籍を取得した。しかし、障害認定日において外国国籍であった者は、障害認定日以後に日本国籍を取得したとしても、障害福祉年金は支給されないのである。担当職員はそのことの知識に欠けていたのである。
 このような状況もあって、神戸市に対して粘り強い働きかけがなされたのである。その結果、1991(平成3)年4月から在日外国人無年金障害者に対する救済制度が神戸市において施行された。政令指定都市での救済制度の実現の影響は大きなものであった。その後、救済制度を求める取組みが各地に広がり、翌年4月からは大阪市においても救済制度が実現した。
 多くの自治体で無年金問題の救済制度が実現しているが、三つの課題があり、そのすべての課題を解決したのは、2022(令和4)年4月からの兵庫県内の自治体だけである。
 その課題とは、高齢の無年金者を対象にするかどうか、無年金障害者を対象にするとき重度者と中度者を対象にするかどうか、支給金額を老齢福祉年金や障害基礎年金と同額にするかどうかである。
 在日外国人の無年金高齢者に対する救済制度は、在日外国人の無年金障害者の救済制度と、ほぼ同数に近い自治体で実現している。しかし、前述したように、4分の1程度の自治体にとどまっている。
 無年金高齢者に対する救済のための給付額は、少ないところで月に5千円、多いところでも月に1万円程度である。
 在日外国人の無年金問題解決のために30年にわたって取り組んできた兵庫県では、粘り強い働きかけの結果、2022(令和4)年4月からは、老齢福祉年金額の半額を市町が、同半額を兵庫県が支給することとなった。この結果、日本国民の老齢福祉年金額と同額が支給されることとなったのである。
 在日外国人の無年金障害者に対する救済制度において、多くの自治体では重度者に限定している。重度者であっても身体障害者と知的障害者に限定している自治体が大半である。換言すれば、精神障害者の無年金者を対象にしているのはほんの一部の自治体にすぎない。
 兵庫県における対象者も重度者に限られていたが、2022(令和4)年4月からは中度の障害者も対象になった。それも、身体障害者と知的障害者に加えて精神障害者も対象になったのである。すなわち、国民年金法における障害基礎年金の対象者と同じにしたのである。
 無年金障害者に対する給付額は、障害基礎年金額の半額を市町が、半額を兵庫県が支給することとなった。すなわち、市町の給付額と兵庫県の給付額を合わせると障害基礎年金額と同額になったのである。
 無年金障害者に対する救済のための自治体からの給付額は、多くの自治体が月に2万円程度である。数万円を支給する自治体もあるがきわめて数少ない。
 政令指定都市で、在日外国人の無年金障害者の救済制度を2番目に創設した大阪市では、創設当時は月に3万6千円の給付額であったが、数年後には2万円に引き下げ、そのまま今日に及んでいる。大阪市に住んでいる在日外国人の無年金障害者は、大阪市からの給付金2万円と大阪府からの給付金2万円、合わせて月に4万円が支給されるにとどまっている。兵庫県に住む無年金障害者への給付額の半額にも満たない状況が続いているのである。

 それでは、何ゆえに兵庫県では、老齢福祉年金額と同額の、障害基礎年金額と同額の給付額が支給されるようになったのだろうか。それは、ひとえに、無年金問題を解決しようとするための取組みを粘り強くそれも日常的に取り組んできたからにほかならない。何らかの改善を求める運動は、往々にして行事をこなす如く、スケジュールをこなす如くに1年に数回程度という決まりきった取組みになっているのではないだろうか。そんな取組みで自治体を動かすのはきわめて骨の折れることである。兵庫県での取組みは、スケジュール運動ではなく、日常的に且つ継続的に取り組んでおり、行政の側に熱意が伝わるような取組みを続けてきた賜物であるといえる。
 兵庫県での取組みを他の自治体でもモデルにして、1日も早く完成形態の救済制度の実現に向けて取り組む必要がある。完成形態の救済制度とは、老齢福祉年金と同額の、障害基礎年金と同額の給付金支給を、無年金者に支給する制度を実現させることであり、障害者の対象者を障害基礎年金の対象者と同じにすることである。
 自治体に対して何か新しい制度の創設を求めると、たいていの場合は「他の自治体の状況を勘案して」などと繰り返すことが多い。それならば、兵庫県が完成形態の救済制度を実現したのであるから、大阪市も大阪府も「兵庫県の制度を勘案して」となってもらいたいものである。

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